2013年12月4日水曜日

インディゲーム開発者とコミュニティ

12月21日にアメリカのIGDAからゲストを迎えて、「日米ゲーム『新』時代」というセミナーを開催します。その背景となった出来事や、ここ最近のインディゲームを巡る動向についてちょっと感じることがあったので、ブログを書いてみます。

さて、この一年を振り返ってみると、今年のゲーム業界はインディゲーム開発者の年でした。3月のBitSummitを皮切りに、東京ゲームショウのインディゲームコーナー、SIG-Indie10、東京ロケテゲームショウ、デジゲー博と、同人&インディゲームのイベントが例年になく盛り上がったように思います。クラウドファウンディングとインディゲームの結び付きも大きなトピックでした。国内では「モンケン」、海外では「Mighty No.9」が資金調達に成功し、新しい可能性を示しました。

でもって、インディゲーム開発者であれば、おそらく自分たちが作ったゲームを世界中で配信することを夢見ているのではないかと思います。できるだけ多くの人にゲームを遊んで貰うのはクリエイターの性みたいなものですし、世界中に配信できる中で、あえて国内だけでリクープを狙う必然性が乏しいからです(タイトルによるとは思いますが)。ただ、多くの人が漠然と海外版を出してそれっきり、みたいな感じではないでしょうか。

これは書籍の世界でも同じように感じているのですが、なんとなく「コミュニティベースドパブリッシング」という考え方が、世の中に広まっているような気がします。コミュニティの中で講演をしたり、ブログを書くなどして、高い影響力を持っている人またはグループが書籍を執筆し、それを周りのコミュニティ参加者が口コミで周囲に伝播させていき、売上に貢献するというモデルです。それによって得た利益を執筆者は再びコミュニティに還元し、次のループが始まる・・・。まるで同人誌やミニコミ誌みたいですが、このコミュニティがインターネットやSNSを介して薄く広く拡散している点が、おもしろい点ではないでしょうか。それになにより、今時ふつうの書籍より何倍もの冊数を、同人誌が売り上げていたりしますしね・・・。

閑話休題。たとえば今ならクラウドファウンディングで資金を募って書籍を作成する、なんてこともできそうです。でも実際に資金を調達するには、ある程度のネームバリューがあって、コミュニティを形成していることが重要であることは、なんとなく気がついている人も多いのではないかと思います。そして一方的にコミュニティから簒奪するのではなく、著者もまたコミュニティの構成員の一人として、そこに還元していく姿勢がなければ、コミュニティ自身が枯れてしまうでしょう。

つまり何が言いたいかというと、もしインディゲームを作って世界で配信したいなら、ゲームを作るのとを同じくらい、国際的なユーザーないし開発者コミュニティの育成が重要な時代になっている、ということです。たとえばSteamでグリーンライトを通過するためには、世界中のユーザーの後押しが必要不可欠です。そのためには「ゲームができたから、みんな応援してね」ではなく、日頃から開発者コミュニティの一員として、知人のゲームのグリーンライト通過を応援するなどの姿勢が求められるでしょう。いわば「情けは人の為ならず」というわけです。別に海外でなくても、コミケで委託販売を手伝うとか、国内でも同じですよね。

自分はゲーム開発者ではありませんが、やはりIGDAでいろいろ活動をして、GDCに毎年行っているうちに、だんだんと開発者コミュニティを通した知り合いが増えてきました。IGDAでは毎年GDCに加えて、カジュアルコネクトアメリカにあわせてIGDAサミットというカンファレンスを開催し、知見を共有し合います。ぶっちゃけ、そんなに大きなカンファレンスではなくて、100名くらいのメンバーが集まるくらいなんですが、規模が小さいだけに交流も密接です。自分も今年はじめて参加したのですが、ただ参加するだけではつまらないので、「なぜIGDA日本はゲーム開発者ではなく、ジャーナリストが運営しているのか」と題して、一席ぶってきました。英語での講演でしたが、事前に用意した英文を読み上げるだけでしたし、時間も20分くらいでしたし、なにより聴衆も5-6人でしたので、そんなに大変では亡かったです。

そこでお会いしたのがエド・マグニンさんというベテランゲーム開発者です。アップル2時代からずーっとプログラマとしてゲームを作っている人で、現在は独立されて携帯ゲーム機とスマホに特化したゲーム開発を行っています。IGDAでは財務をあずかるIGDAファンデーションというグループの世話人をされており、知日派で日本に住んだ経験もあるとのことで、日本語を勉強されています。そのマグニンさんがクリスマスにあわせて日本に来日するので、何かIGDA日本で講演したいという依頼があり、今回のセミナーを企画する運びとなりました。

しかもマグニンさん、自分が英語で講演したのに影響を受けたらしく、自分も日本語で講演するといっています。正直言ってどの程度のレベルか、うーんという感じなのですが、このバイタリティと挑戦心がやはりアメリカのインディゲーム開発者だと思うのですね。失敗を恐れず、常に前向きに行動する。その背景にはマグニンさんの、日本のゲーム開発者とネットワークを作りたい、IGDA日本を通して、開発者コミュニティを広げたいという想いがあります。それが回り回って自分の得にもなるのは、言うまでもありません。このあたり、我々も見習いたいところではないかと思います。

GDCやカジュアルコネクトを取材して思うのは、彼らの「前へ、前へ」というバイタリティです。クリスマス直前で、しかも三連休の初日での開催ではありますが、ぜひ一人でも多くの方に参加いただければ有り難いなあと思います。マグニンさんを迎え撃つ日本のメンバーも、2Dファンタジスタの渡辺雅央さんに、SIG-Glocalization世話人でKAKEHASHI GAMESの矢澤竜太さんと、これまたバイタリティあふれる方々ですので、きっと元気を分けてもらえると思います。

2013年12月3日火曜日

オンラインセミナーについて

IGDA日本では定期的にオンラインのストリーミングセミナーを開催しています。2012年は東京大学の藤本先生と一緒に、不定期にシリアスゲームのカンファレンス参加報告会などを行っていましたが、今年に入って新たに「オンラインセミナー」と題してスケールアップしました。

それに伴い配信方法もUstreamとニコニコ生放送の二本立てとなり、配信機材も自分の「なんちゃって配信」から、クロマキー合成をもちいた本格的な配信にバージョンアップ。配信はIGDA日本理事でグルーブシンクの松井さんに手伝っていただいています。松井さんは業務での配信も受けおわれているため、クオリティが雲泥の差です。

ニコニコ動画で配信されるようになって、単純に視聴者数も増えました。Ustreamだけの時代でも30人から40人くらいの累計視聴者数がありましたが、それに単純にニコニコ動画の配信数が加算された感じです。

2013年9月11日に配信された「IGDA日本オンラインセミナー#03 アメリカ&シンガポール 世界に広がるシリアスゲームの今」では、ニコニコ生放送で累計80人、Ustreamで累計30人と、過去最大の視聴をいただきました。録画をアップしておけば、あとからでもちょこちょこ見て貰えますし、時には「ネットで見たんですが...」と問い合わせをいただくことも。いやー、ありがたいですね。これだけでも配信する価値があるというものです。

IGDA日本ではリアルのセミナーを開催していて、参加者同士の交流やコミュニティ作りにはオフラインが向いているとは思います。ただし地方の方は参加が難しいですし、準備やら当日の運営やらで、結構大変なのも事実。またテーマによらず、どんどんいろんな人に喋りたいことを喋って貰いたいと、ずっと思っていました。そのためオンラインセミナーという形式が、かなり向いているのではないかと思います。あと、やっぱり配信していて楽しいですしね。自分がもともと雑誌の編集をしていたからかもしれませんが、放送とか配信とか、なにかワクワクするものがあります。

というわけで12月9日(月)にはオンラインセミナー#06「今さら聞けないセキュリティ入門」を開催します。講師は東京ロケテゲームショウ・ワーキンググループ世話人で、SIG-Indie副世話人もつとめる、Maniac Houseの大澤範之さん。以前CEDECでも「初心者のためのセキュリティ/プライバシー講座」を講演されました。「セキュリティの話を、できるだけゆるく話す」ことをモットーに講演されるとのことなので、セキュリティに乗り遅れてしまった(僕みたいな)方、ぜひご覧ください(もちろん録画もします)。事前に素朴な質問も受けつけていますので、ぜひハッシュタグ#igdajをつけてTwitterでツイートしてください。講演中のタイムラインでの投稿も歓迎です。ただし、こちらはUstreamのみとなります。

また、年明けにはオンラインセミナー#07も予定していますので、こちらもお楽しみに。こちらは再びUstreamとニコニコ生放送の二本立てとなり、強力な講師が登場する予定です。IGDA日本には、こんなふうにいろんなタレントがそろっていて、どんどん知見を共有していきますので、今後ともご期待ください。

IGDA日本オンラインセミナー配信アドレス
Ustream
ニコニコ生放送





2013年2月10日日曜日

本業優先の法則

会社の社長室などに行くと、よく社是社訓が張ってありますよね。あれは経営者が常々、迷ったときに見て会社の方針を再確認するために必要なんだと聞いたことがあります。

IGDA日本のようなNPOにとって、この社是社訓にあたるのが設立趣意書、すなわち「ミッション」です。詳細はIGDA日本の紹介スライドの5枚目に記されているので、ぜひご覧になってください。

IGDA日本はこのミッションに即して、さまざまな活動を行っているのですが、そこで一つ重要な行動規範がありました。どこにも書かれていないので、改めて紹介します。それが「本業優先の法則」です。

世の中にはさまざまなNPO法人があり、中には常勤雇用者を抱えている団体もあります(IGDA本体も数名の常勤雇用者がいます)。しかしIGDA日本については、今のところ給与などはお支払いしていません。そのため常に「本業優先でお願いします」と説明しています。当たり前ですよね。

でも、時々これが逆転しちゃうことがあるんです。一番まずいのは「IGDA日本の運営に本腰が入り過ぎて、業務に支障が出た/体を壊した」みたいな状況が発生すること。そうなると周囲との摩擦が発生しますし、新しく運営スタッフに手を挙げてくれる人はいなくなりますし、活動が先細りになってしまいます。IGDA日本にとって最大のリスク要因といえるでしょう。

ただ、世の中ってどんどん移り変わっていきます。就職した、昇進した、結婚した、子どもが生まれた、地方転勤になった、転職した・・・。人ひとりをとりまく環境も、どんどん変わっていきます。そのため「昔のようにIGDA日本の活動に力を入れることが、できなくなった」ということが必ず発生します。それが当たり前だと思います。

そこで、そういう人には最大限の謝辞でもって、こころよく活動をお休みいただけるようにしています。役員やSIGの世話人であれば、どんどん交替していただければと思います。だってボランティアなんだから! 自由意志でやっているから、楽しいんであって、義務感でやるのは辛いだけですよね。

ちなみに、適任者がいなければ、その人が担当していた分野は、新しく意欲のある方が手を挙げていただけるまで、休止となります。ずーっと休止が続くと、なくなります。そうやって組織の新陳代謝を計っていく仕組みになっています。これはIGDA日本全体としても同じで、役員の任期は2年となっています。再任回数に限りはありませんが、逆に「辞めたい」という人を引き留めることはできない仕組みです。

逆に新しく何かやりたい、という人に対しては、よく「手と口の両方を動かしてください」とお願いするようにしています。手と口の両方を動かす人は、周りから信頼がどんどん集まります。手と口を共に動かさない人は、だんだんフェードアウトしていきます。そりゃそうですよね。

では片方だけの人はどうか? 手だけ動かす人は、雑務でも粛々とこなしていただけるので、大変ありがたい存在です。逆に口だけ動かす人は・・・次第に信頼を失っていきます。これがボランティア団体のおもしろいところです。同じようなことは、オープンソースコミュニティでも聞かれます。実際にコードを書いた人が偉い、というわけですね。

まとめるとIGDA日本は、どんどん中の人が入れ替わっていくことが前提となっている組織です。そのため、できるだけ日々の活動に際して、ドキュメント化を進めるようにしています。そして誰がどう入れ替わっても、うまく引き継げるようにしたいと思っています。だって「本業優先」ですからね! 

というわけでIGDA日本で何かやってみたい、運営に参加してみたい、手伝ってみたい、講演してみたい、という方がいたら、お気軽にお声がけください。「本業優先」で楽しくやっていきましょう!

2013年1月4日金曜日

法人登記が終わりました

気がついたら前回のエントリから5ヶ月もほったらかしになっていて、駄目なブログの見本になっていました、はい。というわけで既にご案内させていただいた通り、昨年12月にすべての手続きを終えて、ぶじにIGDA日本はNPO法人として再スタートを切ることが出来ました。いやー、疲れた、(待っている間が)長かった。何はともあれ「法人化」が「やるやる詐欺」にならなくて良かったです。

ただ法人というのは、なっただけでは意味がなくて、継続していかなくちゃいけない。でもって法人だからできる事業を、粛々と進めなくちゃいけない。だって法人になることは手段であって、目的ではありませんからね。じゃないと「とりあえず社長になりたいから起業する」みたいな話になっちゃう。それと共に、いろんな内規を決めていかなくちゃいけません。

ま、それはさておき、今回はとりあえず(気が早いですが)NPO法人化を進めていく上で、目に見えて現れるようになった変化や、良かったことについて書いてみます。

まず第一に「社会的信用を得た」ことですね。いろんなNPO法人が異口同音に告げています。具体的にはセミナー会場などを借りやすくなりました。最近ではIT業界を中心にいろんな勉強会が開催されるようになりましたが、それでも「NPO法人(認証中)です」というと、やっぱり信頼度が違うと感じます。特に東京では場所代が大きくて、無料または安価で利用できるセミナー会場の有無が、会の活動においてホントにホントに大きいんですよ。

第二に活動内容のドキュメント化が進んだ。これまではよく言えば瞬発力と集中力がある、悪く言えばやりっぱなしで、知見の集積や再利用がおざなりでした。これがNPO法人化を進めるうえで、お金の流れをきちんと管理する必要が出てきた。そのため予算表などをちゃんと作って、蓄積するようになりました。その結果、過去の事例が参照できるようになって、いわゆるPDCAサイクルが回せるようになってきたんですね。

そして第三に組織化が進んで、いろんな活動を定期的にできるようになった。なんといっても今年は夏に福島GameJam、秋に東京ロケテゲームショウを続けて実施できました。東京ロケテゲームショウなんて、一回やってあんまり大変だったから、みんな燃え尽きちゃって、ずっと放置されていたくらいですからね(あまりに大変そうだったから、僕も積極的にかかわってませんでした)。これがどちらも開催されて、しかもみんな余裕がある! いやー、もうびっくりです。

こんなふうに、物事を決めるためのルールを明確にして、みんなで手分けして実施できるようにした成果が、早くも出ました。

でもって、何か一つ火がつくと、どんどん周りが進んでいって、世の中ががらっと変わってしまう・・・そんなことがあるんだなあと、最近あらためて感じています。その恒例がグローバルゲームジャムです。なんと今年は国内で14会場がエントリーして、米国・ブラジルに次ぐ世界三番目の会場数を誇るまでになりました。グローバルゲームジャムって、わずか数年前は影も形もありませんでしたよね。日本に紹介された当時も、「何それ?」と懐疑的な見方で見られることの方が多かった。こうしたイベントの成長にIGDA日本が少なからず寄与できたことはホントに誇りに感じます。

IGDA日本も法人化を契機に、どんどんいろんな人に加わってもらって、ますます会を発展させていければいいなあと思っています。まずは1月19日に新年会がありますし、その後もSIG-Audioセミナナー、グローバルゲームジャム、SIG-BGワークショップとセミナーやイベントが目白押しですので、ぜひ一度足を運んでみてください。よろしくお願い申し上げます。







2012年7月1日日曜日

SusanがCEDEC AWARDSにノミネートされました

すでにご存じの方も多いかと思いますが、CEDEC AWARDSのプログラミング・開発環境部門でIGDA Education SIG(教育専門部会)のSusan Goldさんがノミネートを受けました。「ゲーム開発者の裾野をグローバルかつボーダーレスに広げる活動」というのが、その理由です。解説文には「Global Game Jam(GGJ)」についての説明があり、GGJ立ち上げに伴う彼女の貢献を賞賛するという意味合いであることがわかります。

*Susanさんの略歴はこちら

GGJは2009年にスタートしましたが、当時は日本でほとんど知られていませんでした。それが、わずか数年で急速に成長し、ゲームに関する数々の世界記録を収録した「ギネス世界記録 ゲーマー編」の2013年度版に、世界最大のゲームジャムとして記載されるまでになりました。日本でも東京工科大学を筆頭に各地で参加会場が増え、福島ゲームジャムの開催にも大きな影響を及ぼしています。

というわけで、今回のノミネートはIGDAの一員として、日本支部でも非常に誇りに感じると共に、改めて御礼を申しあげる次第です。ぜひ当日は多くの開発者の皆様のご賛同をいただき、部門賞に輝いて欲しいと強く祈願しています。

ただ、GGJほどのプロジェクトになると、とても1人では開催がおぼつきません。そこでGGJの成り立ちについてご紹介しながら、他のメンバーの功績についても、ここで紹介しておきたいと思います。詳細についてはIGDA日本アカデミック・ブログでも解説されていますので、そちらもご参照ください。

今回のノミネートでもわかるとおり、GGJはIGDAの教育専門部会が立ち上げたイベントです。そのためコンテスト形式ではなく、人材育成面が強く打ち出された内容になっています。この時の中心メンバーとなったのがSusan Gold、Gorm Lai、そしてIan Schreiber氏の3名です。この功績で3名は2009年度のIGDA MVPボランティアに選出されています。

しかし、GGJの母体となったイベントがあります。それが2006年からデンマークで始まったノルディック・ゲーム・ジャム(NGJ)です。この運営ノウハウを抽出し、IGDAの組織力を生かして、世界規模に拡大させたイベントがGGJというわけです。ただ、当然ながらNGJの立ち上げにSusanは関係していません。また前述の通り、Susan1人でGGJを立ち上げたわけでもありません。

また教育専門部会も一朝一夕に生まれたわけではありません。もともとIGDAにはEducation Committee(教育委員会)が存在し、彼らが中心になってGDCやシーグラフで教育サミットを開催していました。その成果として2002年にIGDAカリキュラムフレームワークが策定され、2003年に最初の改定が行われました。しかし、当時はまだSusanはSIGの中心メンバーではありませんでした。

その後、教育委員会は2006年に改めて教育専門部会となり、2008年に第3回目のカリキュラムフレームワーク改定を行います。この時の部会世話人がSusanで、この功績により彼女はMVPボランティアに選出されました(本フレームワークはウェブ上で日本語訳を閲覧できます)。

つまりSusanは2006年に発足した教育専門部会で世話人を務め、2008年にカリキュラムフレームワークの改定にかかわりました。その上で2009年にGGJ立ち上げの中心メンバーとして活躍し、2度にわたってMVPを受賞しました。この2点において、彼女はCEDEC AWARDSのノミネートに、非常にふさわしい人物だと言えます。

繰り返しになりますが、カリキュラムフレームワークを発展させ、さらに世界各地のゲーム教育拠点のネットワークを活用してGGJを世界各地に展開したスーザンの功績は、非常に大きいと言えるでしょう。

一方でGGJは彼女1人の力で生まれたわけではなく、教育専門部会もまた、多くの参加者のボランティア精神によって支えられてきました。GGJも今ではIGDA本体主催のもと、GGJ委員会が運営を担当しており、教育専門部会とは切り離されています。さらに新しくLearning, Education and Games SIG(学び・教育・ゲーム専門部会)が発足し、この分野での広がりを見せています。

こうした背景事情を知った上で、彼女のノミネートについて接すると、より幅広い捉え方が出来るのではないでしょうか? 

*なお、この文章の意図は彼女の功績を何らおとしめるものではないことを、重ねて補足しておきます。

2012年6月28日木曜日

NPO設立総会を開催しました

すでに公式リリースでお伝えしたとおり、IGDA日本では6月23日(土)にNPO設立総会を開催いたしました。これまで本ブログでもお伝えしてきたとおり、昨年末から粛々と設立準備を進めて参りまして、ようやく最初の第一歩が踏み出せたという感じです。

これまで毎月1回のリアルミーティングと、毎週のスカイプミーティングに参加いただいてきた皆様、大変ありがとうございました。またSIGのメンバーやセミナー活動などを支えていただいているボランティアの皆様、会場をお貸し頂くなど常日頃から活動にご協力をいただいている企業の皆様にも、改めて心から御礼を申しあげます。

さて、今後のスケジュールですが、現在は定款や設立趣意書といった申請書類を司法書士の方にご確認いただくなど、申請の最終段階に入っています。おそらく来週中には東京都の方に書類を提出し、認証申請ができるのではないかと思います。その後、申請された旨が東京都公報に掲載されると共に、定款類や収支予算書などが2ヶ月間、縦覧可能になります。んでもって何事もなければ4ヶ月後に認証(または不認証)となります。

ところが、これだけでは話が終わらない! 無事に認証を受けたら、次は法務局に行って登記の手続きを行わなければなりません。その後、登記事項証明書を添付した設立登記完了届出書などを東京都に提出して、無事NPO法人となります。そのため早くても年内、実質的には来年1月から法人として再スタートとなるのではないでしょうか? ちなみに認証までに4ヶ月かかると説明しましたが、これが不認証となると、また再審査に4ヶ月・・・。とほほって感じです。

んでもって、この審査というのがホントにアレでして・・・。たとえば「住所を住民票の通りに書け」という規定があるんですが、これがホントに住民票の通りに書くと通らない!(可能性がある)。または都庁で通っても法務局でハネられる(可能性がある)。それも「3丁目」を「三丁目」にするとか、「○丁目○番地×号」の「号」を削除するとか・・・。人生40歳を超えてなお、まだまだ勉強する毎日です、はいw

というわけで最近はホントに書類を書いたり書類を書いたり書類を書いたり・・・でもって当然のようにケアレスミスが発生して、書類を修正して・・・という事務作業の毎日です。こんなにWordやExelを使ったのは人生で初めてです、いやほんと。とりあえず都庁への申請手続きが終われば、良くも悪くも一段落つくので(でも差し戻しで4ヶ月余分に喰らうのは勘弁して欲しい!)、もうちょっとの辛抱です。

あ、そういえば6月末は決算なんでした(IGDA日本は6月決算)。法人化のためには経理処理をしっかりしなければいけませんよね。うーむ、もうしばらくExcelと戦う日々が続きそうですw

2012年4月3日火曜日

GDC個別報告会と東京の優位性

ちょっと間が空いてしまいました。IGDA日本代表の小野です。

3月31日に開催したGDC報告会では、200名近い方々にご参加いただき、大変ありがとうございました。ディスカッションでも軽く触れましたが、近年のGDCは周辺領域を巻き込みながら拡大を続けており、もはや全容を掴むのは不可能になっています。

会場では自分を含む9名の講演者の皆様に体験談をご報告いただきましたが、それでもまだまだ全容が掴めたとは言えないでしょう。皆さん、話したりないことが多いのではないかと思います。そこで今年は分野別に3回の個別報告会を開催することになりました。

まず4月15日に予定されているのが、GDC学生報告会です。これは学生の立場でGDCに飛び込んだ参加者が、学生の視点で体験記を語るというものです。当初はラウンドテーブル形式の開催も考えていたのですが、4月からゲーム開発者会社に就職した高砂君の発案で、講演会形式で行うことになりました。どれくらい参加者が集まるか不明だったのですが、すでに40名の入場者を集めて満員御礼となりました。また会場をご提供いただいたCRI・ミドルウェア様にも改めて御礼を申しあげます。

翌週の4月22日には、グローカリぜーション部会からGDCローカリゼーションサミット報告会をお届けします。ご存じの通り今日のゲームビジネスにおいて、海外展開は大作ゲームからアプリやソーシャルゲームに致るまで、重要なトピックの一つとなっています。当日はゲーム業界で長くローカリゼーションに携わってきたベテラン世話人が半日かけてガッツリと海外の先進事例をご報告します。まだチケットに余裕がありますので、ぜひご参加くださいませ。こちらはサイバーコネクトツー東京スタジオ様で開催します。たいへんありがとうございました。

そして月末にはオーディオ専門の報告会も予定しています。GDCオーディオ部門のセッション参加者を中心に、専門性の高い報告会ができるかと思います。CEDECなどでもオーディオ関係のセッションは少ないだけに、是非ご期待いただければと思います。

さて、このように個別の報告会がフットワーク軽く開けるというのは、一つには講師として手をあげていただける開発者の皆様の存在があります。情報や知見を企業を越えて共有しよういう試みに快くご賛同いただき、大変感謝しております。

そしてもう一つは東京という場所の利便性です。世界にはシリコンバレーやモントリオールなど、ゲーム開発会社が集まるクラスターが幾つかありますが、東京ほど開発会社が集結し、かつその国を代表するような開発クラスターは、存在しないと言って良いでしょう。だからこそ、飲み会でもセミナーでも誰かが手を上げれば、すぐに集まることができて、大きな波及効果がみこめます。

逆にデメリットとして、世界有数の地価と人件費の高さがあります。今の世の中、単純に開発スタジオを運営するだけなら、 東京にいる意味はほとんどないと言って良いでしょう。だからこそ、山手線周辺地域に大量のゲーム開発者がまとまって存在する特性をフルに生かして、生産性の高いゲーム作りを行う必要がある。つまり企業の枠を越えて、すぐに集まれる利便性を生かさなければ、きわめて損だという意味です。

IGDA日本ではこうした地域の優位性をさらに生かすべく、今後もさまざまな活動を進めていきます。ご期待ください。